前編では、就学前に身につけておくべき生活習慣についてお伝えしました。
後編では、教育委員会の自立相談支援員による講話の内容の中から、就学時までに身につけておきたい文字や言葉の基礎的な能力についてお伝えしていきます。
言葉遊びなどの遊びを通して文字を学ぶ前の準備をはじめましょう!
小学校入学はなぜ7歳になる年なのか?
就学は6歳で、その年度に7歳になる年と学校教育基本法第十七条で定められています。
第十七条
保護者は、子の満六歳に達した日の翌日以後における最初の学年の初めから、満十二歳に達した日の属する学年の終わりまで、これを小学校又は特別支援学校の小学部に就学させる義務を負う。
7歳頃までに育ってくる能力
6歳になると、語彙(ごい)が増え、表現力がついてきます。自分の名前の読み書きや、しりとり遊びなどもできるようになります。友達と集団行動や役割分担ができるようになるなど社会性もついてきます。
こういった急速な成長は4~6歳頃に顕著に発達し、7歳になると組織的な教育を受ける基礎的能力が整ってくることが分かっています。
7歳になる頃には、学習する準備が心身ともに備わっているということなんですね。
ところが、前編でもお伝えしたように、取り巻く環境の変化などの影響もあり、脳の発達の指標となる三角形が描けない子どもが増えているそうです。
今回は、文字や言葉の基礎的な能力についてみていこうと思います。
2.「話しことば」と「書きことば」と「言葉の意味」をつなげる力が育っているか?
3.授業の内容が理解できる「ことばの力」が育っているか?
文字を書ける力が育っていますか?
子どもの方向の認識は、次の順に年齢と共に発達します。
真ん中の概念
「上下」と「前後」はボディーイメージで比較的すぐに理解できるようになりますが、(3)(4)にある「左右」の位置関係は人の立ち位置で変わってくるので、「真ん中」の意識が分かっていないと正しく認識できません。
子どもが「真ん中」を意識できるようになるのは5歳~年長時期に分かるようになります。年齢の上昇に伴い「真ん中」が「おへそ」という明確な位置として理解できるようになります。
真ん中が分かるとひし形が描ける
また、形が分かる能力は年齢と共に発達します。それは「真ん中」を正しくとらえる力が高まることで四角→三角→ひし形が描き写せるようになります。
ひし形を描き写せることで、文字を書き写す能力が整ってきたことが分かるんですね!
息子も、書き取り帳のマス目を使っても上手に文字が書けない時期がありましたが、上下左右が分かっていなかったのかもしれません。
これは年中だった4歳6か月の頃の書き取りです。
見本を見ながらなぞり書きをしてから、一番下の囲ってある部分に書き取りをしています。この頃は、文字が上に寄ったり左右に寄ったりしていますが、今ではほぼ見本に近いバランスで書けるようになりました。
三角形△が描けないと形の似ている「へ」は書くのが難しく、ひし形◇が描けないと「く」を書くのが難しいですね。
そして、11月になって送られてきた就学時検診の結果ではひし形が描けていました。5歳9か月になり、発達が追い付いてきたということだと思います。
「左右」が身につく言葉かけの工夫
普段の会話の中で少しずつ声を掛けてあげるだけで大丈夫です。就学に向けて、家庭で「左右」が身につくような会話を楽しみましょう!
「話しことば(音)」と「書きことば(文字)」と「意味」をつなげる力が育っていますか?
耳で聞いた言葉を音韻(モーラ)に分けて考えることが出来ることを音韻理解といいます。1年生になり、文字を学習することで、文字と音韻(モーラ)とを結び付け、かな1文字と1モーラとがつながってきます。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
「逆さまことば」が言えるには音韻理解が必要なため、「逆さまことば」を検査することで、音韻理解が育っているかどうかを判断することができます。
音韻意識が発達する時期
年長の時期に「逆さま言葉」の音韻意識が急激に発達します。
追っかけ読みからスラスラ読みへ
文字と音韻理解が合わさって身につくことで、文章読解力がついてきます。文字を習い始めの頃は1文字1文字の追っかけ読みです。
息子も、1年前までは抑揚のない読み方をしていました。これが追っかけ読みだったんですね。
次の動画は絵本で「ようし、リーダーになるぞ」と自分で読んでいるところですが、単語と意味はつながっていなかったと思います。
言葉遊びを取り入れよう
就学前の今がとても大切な時期です。言葉遊びを普段の会話に少しでも取り入れることで音韻の意識が身についていきます。
こちらの記事に言葉遊びの方法を紹介していますので参考にされてみてください。親子の会話の中に少しずつ「言葉あそび」を取り入れてみましょう。
今回の就学時検診の結果では、息子は3文字ことばの逆さま言葉が5問中4問、4文字ことばの逆さま言葉が3問中2問が正解していました。保育園でも積極的に言葉遊びを取り入れてくれているお陰だと思います。
正解には〇がしてあり、不正解の場合にはどのように間違っていたのかが記入されています。特記事項に記載があったコメントには、「後半は集中力が切れていたがしっかり考えていた」とあり、考えていく力も少しずつ、ついてきているのかと成長を感じました。
授業の内容が理解できる「言葉の力」が育っていますか?
相手の気持ちを汲み取れるようになり、相手の言いたいことが読み取れる会話ができるようになってくる時期が年長から小学校に上がる頃です。
コミュニケーション力にも育ちの段階があります。
3歳~3歳半 簡単な質問に答えられるようになります。
4歳~4歳半 対処方法についての質問に答えられるようになります。
5歳~5歳半 自分や相手の気持ちを考える質問に答えられるようになってきます。
子どもが身につけにくい言葉はどんな言葉だと思いますか?
一般的に「乗り物」「食べ物」などジャンルを表す言葉・反対語・気持ちを表す言葉・擬音語(ゴロゴロ、トントン)や擬態語(キラキラ、ひらひら)が挙げられます。
擬音語や擬声語、反対語は、絵本の読み聞かせで習得することが多い言葉です。物語を楽しむ過程で子どもの反応に合わせて大人が絵本を読んであげると自然と身についていきます。
絵本や会話を通して身につけていたんですね。
息子は「どっしーん!」という言葉をよく使っていますが、これは大好きな絵本で覚えた言葉です。
気持ちを理解する力
会話のなかで、相手の気持ちを読み取ることはとても大切なことです。
自分の気持ちとそれを表す言葉を知っていると、相手の気持ちも理解できるようになります。相手が自分と同じような気持ちだということや、あるいは違う気持ちでいることも分かるようになります。
「わたし」と「あなた」の関係。この時、目を合わせることがとても大切です。後々、目を合わせることで同じ考えや同じものを共有しているという意識を持てるようになり、言語コミュニケーションの発達に影響を与えます。
「わたし」と「あなた」と、「もう一つ」の関係。「可愛い犬がいるね」「わ、かわいい!」など、同じものをみて嬉しい、楽しいの気持ちを共感できることで、言語・コミュニケーション発達が促進されます。
視線を向けた時におとなが必ず視線を返してくれる体験が、子どもの中に安心感を育て、愛着、基本的信頼感など、生涯にわたる心理的な安定の基礎になります。
参照 子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために(中川信子)
子どもが話しかけてきたら、家事や仕事で忙しくても、なるべく視線を合わせて応えてあげるようにしましょう。
絵本の読み聞かせでも三項関係をつくることが出来ますね。目を合わせながら一緒に読んでみるのも良さそうです!
一方通行の映像は三項関係ではない状態であるため、理解しにくい言葉を聞き流したり、解釈の違う意味で覚えてしまったり、「どうしてだろう?」という疑問を持ったり自分の答えを導きだそうとしなくなるからです。
自分が言いたいことはよくおしゃべりするけれど人の話をしっかり聞くことができない、聞かれたことに的確に答えられない、会話のキャッチボールができない、など言葉とコミュニケーションに関する課題のある子どもが増えてきていると言われているのはこういった背景が考えられます。
小学生で、先生が注意しても話を聞いていない(聞けない)、何を注意されたのか分かっていない、考えることができない子どもが増えているという話を聞いたことがあります。
私も改めて、子どもと一緒に何かを見たり感じたりする機会をたくさんもって、気持ちを表す言葉を使って「心」を理解する力をつけてあげたいと思いました。
まとめ
いかがでしたか?
小学校に上がるまでに子どもとの会話や絵本の読み聞かせなどをたくさん楽しみましょう。
いっぱい話しかけ、話してもらって、笑いかけ、笑い合ってください。抱っこやおんぶしてあげられるのも今のうちです。ギューッと抱きしめ、しっかり視線を合わせ、話を聞いてあげて、愛されていると感じることで、子どもたちはこれから踏み出す大きな一歩のエネルギーをチャージしているのだと思います。
<文献など>
論文 幼児期後期における「言葉領域」の発達と、子どもの成長全般への関連について-よりよい保育実践の視座を得るために-
文献 子どもの「まんなか」の概念に関する発達的研究
参照 子どものこころとことばの育ち―親子を共に支援するために(中川信子)