世界の教育ICT化はどうなっている?イギリス小学校からの現場レポート

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コロナ休校をきっかけに、小学校でも教育ICT化への関心が急速に高まっています。

実際に、プログラミング教育の必修化、文部科学省の「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」など、着々と教育現場へのICT導入は進んではいますが、

  • どのような形で授業に活用できるのか
  • どのようなメリットがあるのか

といった、具体的なイメージがわかないという方も多いのではないでしょうか。

日本ではICT導入までの道のりがやっとここまで来たという感じですが、世界の先進国ではどのように教育のICT化をしているのでしょうか。

この記事では、EdTech(教育テクノロジー)の導入が進むイギリスの小学校でのICT活用例を、現地小学校の教育スタッフ、そして、小学生の子どもを持つ保護者としての視点でレポートしたいと思います。

イギリスの学校におけるICT普及率

イギリスでは、教育省がEdTech(教育テクノロジー)を推進しており、ほとんどの学校がWi-Fi完備、教室にはインタラクティブホワイトボード(電子黒板)が導入されています。
2014年からは5歳以上の学年でプログラミング学習が必修化し、教室でのタブレット導入率も非常に高くなりました。

ICT機器の充実度は学校の予算などによって異なりますが、我が家の娘が通う公立小学校では、各テーブル(2〜3名)にタブレットが1台ずつ用意されており、主にグループでのアクティビティで活用しているようです。もちろん中には、1人1台という学校もあります。

では実際に、イギリスの小学校の授業で、電子黒板やタブレットなどのICT機器をどのように活用しているのかを見ていきましょう。

イギリスの小学校の教室にはインタラクティブホワイトボード(電子黒板)

イギリスの小学校のICT化で、まず注目したいのがインタラクティブホワイトボード(電子黒板)です。

イギリスでは、2004年から従来の黒板やホワイトボードに代わって、電子黒板が学校に導入され始めました。今では、小学校を含め、ほとんどの学校に設置されています。

電子黒板の活用例

日本と違い、イギリスの小学校には教科書がないこともあり、電子黒板はいろいろな科目で活躍しています。

たとえば、英語(国語)の授業では、先生が選んだ1冊の本について勉強します。その際に、読んでいるページを電子黒板に大きく写したり、本の内容についての質問を表示して、クラスみんなで話し合うのに便利です。

ほかにも算数では、図形の展開図を動画でわかりやすく教えたり、理科や社会の授業で画像や動画を使ってより理解を深めたり、YouTube動画でみんなとダンスや歌を楽しむこともあります。

導入のメリット

電子黒板を教室に導入する主なメリットには、つぎのようなことが挙げられます。

  • 授業への積極性や理解力が高まる
  • 生徒の集中力が高まる
  • 授業時間が短縮される
  • 先生の授業準備が効率化される

表示した図などを拡大したり、文字を書き込みながら説明することで、従来の黒板より生徒の注目をひきつけやいのが、電子黒板の大きなメリットのひとつです。
オンライン授業で、ZOOMの画面シェアなどを経験された方なら、イメージしやすいかもしれませんね。


(表:平成31年度(令和元年度)全国学力・学習状況調査の結果より抜粋)

文部科学省のアンケートでも、86.5%の小学生が、「授業でもっとコンピュータなどのICTを活用したいと思っている」と回答しており、うまく活用すれば、生徒の学習意欲の向上も期待できます。

導入のデメリット

電子黒板を教室に導入するにあたり、いくつかデメリットもあります。

  • 導入時にトレーニングが必要
  • ICTに詳しいスタッフが必要
  • 生徒の電子黒板の扱いに注意

イギリスでも電子黒板が導入された当時は、先生が授業に使いこなせていないことが取り上げられ、「お金のムダ」とニュースになったこともありました。

ICTは使いこなせてこそ意味のあるものなので、せっかく導入するのであれば、先生たちへのトレーニングは必要不可欠といえるでしょう。
また、生徒が勝手に電子黒板を触らないように、しっかりとルールを徹底することも重要になります。

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イギリスの小学校では授業や宿題にアプリを活用

イギリスの小学校におけるEdTech(教育テクノロジー)・ICT化の流れで、もうひとつの大きな特徴は、アプリやオンライン学習サイトの活用です。

ここ数年で、宿題や授業でアプリやオンライン学習サイトを使用する小学校がいっきに増えてきました。こちらも導入したばかりの頃は、保護者からの不満が多く寄せられましたが、今ではすっかり日常化しています。

実際にイギリスの小学生がどのような学習ツールを使っているのか、いくつか例をご紹介しますね。

オンライン算数「Mathletics」

Mathleticsのスクリーンショット

Mathletics」は、算数の宿題・家庭学習に使われるオンライン学習サイト(アプリ)です。
シンガポール式算数を取り入れた、イギリスのMathmasteryという学習方法を学ぶことができます。
ただの数字を使ったドリルではなく、視覚的に理解しやすい工夫や、身近なものを使った問題が多いのが特徴です。

また、「Times Table Rockstars」というかけ算のドリルアプリも、多くの小学校で取り入れられています。
コインが貯まるゲーム形式で、個人、クラス対抗、さらには全国の学校対抗でランキングを競い合えるので、モチベーションをキープしながらかけ算の学習ができるように工夫されています。

筆記体練習ツール「Letter-join」

https://www.letterjoin.co.uk/

Letter-join」は、イギリス式の筆記体を練習するアプリです。
イギリスの小学校では、小さいうちから筆記体で文字を書くように指導されます。
このLetter-joinは、単語を入力すると筆記体で表示され、動画で書き方を確認、指なぞりで練習することができます。

英語の音読支援サイト「Oxford Owl」

https://www.oxfordowl.co.uk/

Oxford Owl」は、イギリスの小学校で英語のフォニックス学習に使われるOxford Reading TreeのeBookが無料で読めるウェブサイト(アプリ)です。
オンラインで本が読めるだけでなく、お手本の読み方も再生できるようになっているので、我が家のように英語が母国語ではない家庭ではとても重宝しています。
「Oxford Owl for Home」という無料で利用できる家庭用のアカウントもあるので、フォニックスの練習をしたいお子さんや保護者の方におすすめです。

クイズ形式アプリ「Kahoot!」

授業中に、「Kahoot!」というクイズ形式アプリを使うこともあります。
ちょうど今日も、エジプトについて学習している我が家のYear3(小学校1年生)の娘のクラスで、先生が作ったエジプトの写真付きの4択クイズをグループで話し合い、タブレットから回答するという授業が行われたようです。

「Kahoot!」について、詳しくはこちらの記事をどうぞ。

【オンライン授業にも】Kahootで授業をもっと面白く! ICT授業導入にも最適
先生のみなさん、kahootをご存知ですか?ICT授業の導入にも大変オススメのアプリなんです!今回は、その使い方と授業での導入方法をお伝えします。オンライン授業での導入を検討している先生方にもオススメできるツールです。

保護者と学校のやりとりにもアプリを活用

イギリスでは、保護者と学校のやり取りもICT化しています。学校からのメール、学級だより、保護者面談の予約、給食費の支払いなどなど、ほぼすべてのやり取りが、ひとつのアプリで完了。

兄弟が別々の学校に通っている場合でも、ひとつのアカウントで管理できるようになっています。

また、ナーサリー(3〜4歳)など、年齢が低めの学年では、子どもたちの日常の様子や学習記録が画像つきで見られるアプリを使っている学校も少なくありません。ひとりひとりに連絡帳を書く先生の手間が省けると同時に、保護者も子どもたちの様子が垣間見られてうれしい、Win-Winのソリューションですよね。

小学校教育にICTを導入する際の注意点

小学校の教育にICTを導入する際の注意点は、主につぎの3つです。

  1. 生徒の目の疲労に配慮
  2. 電子黒板の反射を防ぐ工夫
  3. ICT機器を安全に使うためのサポート

注意点1.生徒の目の疲労に配慮

教室で電子黒板を使って授業をする場合、長時間スクリーンを見ていると、子どもの目が披露してしまうことがあります。

カーテンを閉める、電子黒板付近の照明を消す(教室を真っ暗にするのは、逆に目がつかれるのでNGです!)などの配慮をしましょう。

注意点2.電子黒板の反射を防ぐ工夫

電子黒板が反射すると、書かれている文字が見にくくなり、子どもたちの集中力が低下していまいます。光がスクリーンに写り込まないように、電子黒板を設置する位置や角度を工夫してみましょう。
反射防止用の専用フィルタを使用するのも効果的です。

(参照:文部科学省「児童生徒の健康に留意してICTを活用するためのガイドブック」

注意点3.ICT機器を安全に使うためのサポート

教育のICT化が進むと、家庭でも学習アプリやインターネット検索などで、子どもがICT機器を自分で使用する機会が増えてきます。

そのため、子どもがICT機器を安全に使えるよう、学校や家庭で指導やサポートが必要不可欠です。
また、アプリやウェブサイトを宿題に活用する場合は、家庭にICT環境がない子どもに配慮する必要もでてきます。

まとめ

今回は、EdTech(教育テクノロジー)の導入が進む、イギリスの小学校でのICT活用例をご紹介してきました。

はじめは学校・保護者ともに、戸惑うことが多いかとは思いますが、導入時には電子黒板を使いこなせなかったイギリスでも、今や80%以上の教育者が、「テクノロジーは生徒の学習意欲を高める」と認識するほど日常的なものになってきています。

ただし教育のICT化は、上手に機能を使いこなせてこそ効果を発揮するものです。いっきにいろいろな機能を使おうとするよりも、子どもたちの反応を見ながら、少しずつ導入していくのがおすすめですね。




この記事を書いた人

4ヶ国語環境での育児に奮闘する、ロンドン在住2児のママ。
イギリスとフランスで経験した育児・教育事情や、イギリスの大学院で学んだ初等教育の知識をもとに、役立つ情報を発信していきます。

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