福岡市の清水保育園は、しつけと礼儀を重んじ、地域に根ざした保育を続けています。今回は、江嵜尚子園長に、教育理念や卒園生との絆、そして「立腰教育」に基づく独自の取り組みについてお話を伺いました。清水保育園の目指す「しつけ」がどのように地域と子どもたちの成長を支えているのか、その一端をご紹介します。
清水保育園設立の背景と初期の挑戦
清水保育園が博多区堅粕(かたかす)で新たに運営を引き継いだのは15年前のことです。これは福岡市の公立保育所の民営化の一環として行われました。「仁愛保育園」の初代園長である母(石橋富知子)の思いを受け継いで、江嵜尚子園長は、「立腰」と「しつけの三原則」を軸に、地域の子どもたちに寄り添い、さまざまな課題に向き合いながら保育園の運営に挑みました。
「『立腰教育』はその気になれば、いつでも・どこでも・誰でもできる教育であることを信じ、地域の方々に少しずつでも役立てればと考え、保育園を始めました。」
「立腰」と「しつけの三原則」が育む地域の変革
清水保育園の保育方針の中核には、「立腰」と「しつけの三原則」が軸となっています。内容は「腰骨を立てる」、「挨拶は自分から先にする」、「返事はハイとはっきりする」、「はきものは揃える、イスは入れる」を保育士が手本となり、子どもに愛をそそぎながら、子どもと一緒にやり続けることです。江嵜尚子園長は開園当初、毎朝門に立ち、膝をついて子どもの目線で挨拶し、子ども達や保護者と心の扉を開く土台づくりをしました。
「保護者の方々からも『どうしてそこまで挨拶を徹底するのか』と聞かれることがありましたが、続けていくうちに次第に理解が深まりました。」
園周辺の清掃活動や道行く人への挨拶等の清水保育園の取り組みは地域全体に広がっていきました。この変化に、清水保育園へ「来てくれてありがとう」、「もっと早く出会いたかった」との数多くの感謝の声が寄せられるようになりました。
「立腰教育」とは?
江嵜尚子園長が教育哲学者・森信三から直に授かった「立腰教育」とは、子どもたちの身体の中心である腰骨を立て、姿勢を正すことで、心を整えるための教育法です。「立腰」とは、簡単に言えば「腰骨を立てる」ことを指しますが、「立腰」の型を通して、目に見えない心を育てることを目指す深い教育的意義があります。「立腰教育」の考案者 である森信三は、「腰骨を立てることで、集中力や忍耐力が高まり、心が落ち着き、他者を尊重する姿勢が自然に身につく」と提唱しています。
清水保育園では、子どもたちが自然と「立腰」を習慣化できるよう、日常生活のあらゆる場面に「立腰教育」を取り入れています。たとえば、朝の挨拶や食事、座る姿勢などにおいて、腰骨を立てて姿勢を正すことを意識させ、集中力や心の安定を育むよう努めています。
「腰骨を立てることを日々続けると、子どもたち自身も気持ちが整い、自信を持って物事に取り組めるようになります。心と体の安定が成長の基盤となり、自然と礼儀や思いやりの心が育まれていきます。」
「立腰教育」の効果は、保育の現場だけでなく、その後の小学校や家庭生活にも影響を与えるとされています。しっかりとした姿勢と礼儀作法が子どもたちの行動や言葉づかいにも現れ、地域や家庭からも高く評価されています。
職員が実践する「職場の三原則」と保護者からの信頼
清水保育園では、職員に「職場の三原則」を基に礼儀や品格を重んじ、子どもたちにとっての「手本」としての役割を大切にしています。職員は「保育士である前にひとりの人間として人格者であらなければならない」と自覚し、日々の行動で「立腰教育」の精神を伝えています。
「園に見学に来られた方は、職員ひとりひとりの生き生きとした表情に驚かれます。これこそ『立腰教育』の一つの成果だと思われます。」
ふるさと清水 卒園児との絆が深まる運動会のエピソード
清水保育園の地域との強い絆を象徴するのが、毎年秋に行われる運動会です。小学生対象の卒園児の演目には、今年も卒園児の6割近い106名が参加し、卒園児たちが元気に集う姿に、保護者や地域住民も感動しました。
「『腰骨を立てます』のひと声で一瞬会場が静まりかえった時、一つ一つ小石を積むように例外なくやり続けた『立腰教育』が、子ども達の心の中にとけこんでいることを実感します。卒園児がふるさと清水を懐かしみ、戻ってきてくれる姿は本当に嬉しいですね。」
「立腰教育」が、未来を変える
「保育園での生活を通じ、『立腰』が自分の軸になった時、自分の心の支えとなります。将来、どんな困難に直面しても力になります。この保育園が地域の誇りであり続けるよう、『立腰教育』を軸とし、これからも進んでいきます。」
まとめ
清水保育園が大切にしている立腰教育の原点は、「愛敬の精神」であり、人間を人間として軌道に乗せるための教育方法であります。地域の方々や卒園児との絆を通じて、清水保育園の教育は地域に深く根付いています。また、清水保育園はその独自の教育方針が評価され、国内外の保育園から目標とされる存在となっており、視察が後を絶ちません。今後は、日本国内はもちろん、海外の保育園にもそのノウハウを提供し、人間形成の支援をさらに広げていきたいと考えています。清水保育園はこれからも、「立腰教育」に基づいた教育活動を通じて、地域と共に歩んでいきます。
社会福祉法人 凜の会 認定こども園 清水保育園
- 住所:〒812-0043 福岡市博多区堅粕1丁目28番48号
- TEL :092-651-2165
- ホームページ:https://rin-shimizu.jp/