2020年から小学校でも必修化されたプログラミング教育ですが、コロナ禍の影響もあって順調には進んでいません。現場で指導に当たられる方々は、日々どのようにプログラミングの授業を進めていけばよいのか、試行錯誤されておられるのではないでしょうか。先行事例も少なく、他校の状況もわかりにくい中、プログラミング教育に携わっておられる方のために、本記事では授業や課外活動で楽しみながら学べるプログラミング教材を紹介します。
プログラミング授業に何が求められているか?
最初に現場の課題を見ておきましょう。
以下のグラフは平成30年文部科学省が発表した『学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果』によるものです。
【教員のICT活用指導力の推移】
このグラフで目を引くのは、黄線で示されている「授業中に ICTを活用して指導する能力」が急上昇していることです。それに反して紫線の「児童・生徒のICT活用を指導する能力」が伸び悩んでいることが見て取れます。
子どもたちに適切なプログラミング教材を提供し、使い方を指導したりサポートしたりする能力が課題となっていることがわかります。
求められるのは教科との接続
プログラミング用教材は高度なプログラミング知識を必要とはしません。また、ゲームなどを通じてデバイスの操作に慣れている現代の子どもたちは、教材の操作はすぐに上達します。
教師に求められるのは、プログラミングの授業や教材を使って指導し、算数や理科などの教科との連結を図ることです。そこで本記事では、授業で使いやすく教科と連結しやすい教材を選び、実践例とあわせて紹介します。
プログラミング教材の種類
プログラミング教材は大きく分けて3種類あります。
- アプリを使ったプログラミング学習ソフト
- ロボットを動かすロボットプログラミング
- パソコンを使わずカードなどを使って学ぶアンプラグド教材
プログラミング学習ソフト
プログラミング学習ソフトには、絵やブロックを使ってプログラミングを学ぶタイプのもの(Scratch、Viscuit)とテキストでプログラミングを学ぶタイプのもの(IchigoJam)があります。
Scratch
Scratchはビジュアルプログラミング言語です。プログラミング言語は一切使わないまま、ブロックを使いながら、本格的なプログラミングを理解できる仕組みとして、全世界で取り入れられています。
ブロックを操作して楽しみながらゲームやアニメーションを創ったり、算数の授業の一環として図形を学ぶこともできます。
太田’s 小学校教材サンプルで実際に小学校で作成された作品を見ることができます。
プログル|学校の授業で使えるプログラミング教材では指導案や教材が幅広く提供されています。
Viscuit
お絵描きをしながらプログラミングの仕組みが学べる教材がViscuitです。
おしえる:指導者向け資料では、ビスケットを活用した授業やワークショップの事例も紹介されています。
IchigoJam
IchigoJamは、手のひらサイズのプログラミングを学べる専用パソコンです。キーボードやテレビと接続して使います。LEDボードやドローンやロボットなどの拡張機能も用意されており、プログラミングがどのように動作するか、視覚化することもできます。
IchigoJamを使ったプログラミング教育のページでは、中学の授業で使われた実践例や生徒の反応を知ることができます。
ロボットプログラミング教材
ロボットを動かすプログラミング教材です。プログラミングの仕組みを体感的に把握でき、子どもたちも夢中になる教材です。
embot
embotはダンボールで組み立てたロボットを動かしながら学ぶプログラミング教材です。プログラミングも最初は単純な動かし方から始まって、自分の思い通りに動かせるプログラミングを見つけられるようになっています。
実践事例/指導案 | embot公式ホームページで実際の授業でどのように使われているか、また教科との接続方法のサンプルを見ることができます。
Makeblock
プログラミング言語Scratch2.0を使ってロボットを動かします。
Makeblockの指導案と事例も提供されており、今後もリリースが続く予定です。
アンプラグドプログラミング教材
アンプラグドプログラミング教材は、コンピューターの代わりにカードや本、ボードゲームを使ってプログラミング思考を学ぶ教材です。幼児や低学年を中心に、楽しみながらプログラミング思考を身につけます。
『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング』
『ルビィのぼうけん こんにちは!プログラミング 』は、宝石集めを通じてプログラミングを学べる絵本です。
『コンピューターを使わない小学校プログラミング教育 “ルビィのぼうけん”で育む論理的思考』では教室でプログラミング教育を行うための実践例が紹介されています。コンピューターやタブレットが使えない環境下でプログラミングを学ぶための指導法などを知ることができます。
求められるのは楽しむ子どもをサポートすること
ICT環境で生まれ育った現代の子どもは、デバイスを操作することにはまったく抵抗がありません。お絵かきソフトでもロボットでも、楽しんで取り組むでしょう。その中で教える側に求められるのは、「うまく操作する」ことではなく、学習として教科と接続することです。
初めての先生には手探りの部分も多いでしょうが、本記事ではオンライン上でダウンロードできるさまざまな指導案や事例を紹介しています。ぜひ参考にしてください。