小学校でプログラミング教育が始まった頃から、「プログラミング的思考」という言葉を目にしたり聞いたりするようになった方もいらっしゃるかと思います。あまり日常では使われない言葉ですが、プログラミング的思考とは、ある目的に対しての手順を考え、よりよい方法を自ら見つけ出す考え方で、論理的思考のひとつといえます。
このプログラミング的思考を意識して使うことは、家庭でも手軽に行うことができます。そこでこの記事では、毎日のお買い物やお料理などの日常の中ですぐ実行できる、親子で楽しめるプログラミング的思考にふれるあそびをご紹介していきます。
そもそも「プログラミング的思考」ってどんなもの?
最初に、改めて「プログラミング的思考」について、詳しく解説していきます。“プログラミング”という言葉が入っているので、「コンピュータを使ってプログラミングすること」と思われがちですが、文部科学省が公開している「小学校プログラミング教育の手引」によると、プログラミング的思考について以下のように書かれています。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
出典:文部科学省「小学校プログラミング教育の手引(第三版)」より
プログラミングを行うときの思考方法と近いため、このような呼び方になりました。小学校の授業にプログラミング教育が取り入れられた理由の一つが、この思考を養うためです。
しかし、プログラミングをしなくても、わたしたちは毎日の生活のなかで「これをするには、こういう順番でやるともっとも効率的かな」と、無意識にたくさんのプログラミング的思考を行っているのです。
この思考を鍛えていけば、プログラミングに限らず、様々な問題にぶつかったり、何か叶えたい目的があったりしたときに「こうすれば、うまくいくかな」「この順番でやると効率的かも!」というふうに、素早く自分の達成したい目標に近づくことができるようになります。あそびの中に「プログラミング的思考」を意識して取り入れることで、即プログラミング的思考が身に付くわけではありませんが、ゴールまでの最適解を考える習慣のきっかけになっていくでしょう。
お買い物の順番を考えてみよう
おすすめのあそびとして最初にご紹介するのが、お買い物です。
スーパーでまとめてすべての買い物を済ませてしまうにしろ、八百屋さんやお肉屋さんなど複数のお店をまわるにしろ、どの順番でまわると効率がよいか、多くの方は考えていらっしゃるでしょう。
これこそが「プログラミング的思考」の第一歩。お子さんと一緒にお買い物に行く際、買い物したい内容を伝え、どの順番でまわると一番早くまわれるのか、親子で考えてみましょう。
頭の中だけで考えるのが難しい場合は、家で簡単な地図を紙に書いて、まわる順番を決めるところからスタートしてみてください。スーパーの場合は、売り場案内を見て、買い物のコースを決めてみるとよいですね。
ここで大切なのが「答はひとつではない」ということです。
もちろん、もっとも効率的な手順は存在しますが、決してそれだけが答ではありません。遠回りするコースも、最適解ではないかもしれませんが、多様な答のひとつです。そこで、「このまわり方なら、もっと早くまわれるね」と、他の方法もある、色々な手順があるということに気付くことが大切です。
お料理の手順も実はプログラミングだった
もうお気づきかもしれませんが、お料理は、まさにプログラミング的思考によって完成しているもののひとつです。
2. 完成までの手順を考え、その順番に従って調理する
夕飯の準備をする際、複数のメニューをどの順番で作れば効率がよいか、洗い物が少ないか、冷めずに提供できるか……など、様々な条件を考え、つくっていく手順はまさにプログラミングそのもの。
子どもと一緒に挑戦する場合は、簡単なお料理から始めるとよいでしょう。
最初は、紙に調理の手順をひとつひとつ書き出していきます。そして、この手順でいいのか、確認し実際にやってみます。終わったあと、感想を聞いたり、アドバイスをしたりして、次につなげていきましょう。
ロボットあそびで「めいれい」してみよう
ロボットあそびは、お父さんやお母さんがロボットになり、子どもに命令をしてもらうあそびです。最初に「ロボットがおかしをたべる」「ロボットがおもちゃをもってくる」などのゴールを決めておきます。そして、ゴールのために必要な命令を、ひとつひとつ子どもに言ってもらい、ロボット役は言われたとおりに動きます。
ルールは簡単
・ロボットは言われたことしかできません
・一度にひとつのことしかできないので、細かく命令してください
例:「立つ」「1歩あるく」「右を向く」
慣れないうちはなかなかうまくいかず、もどかしさを感じるかもしれません。普段簡単にやっている動作も、細かく分解するとたくさんの動きが繋がっていること、そして実際にロボットを動かすためにはこれだけ細かい命令をしていることを、改めて実感できるあそびです。
お散歩でプログラミングされているものを探そう
街を歩いているときに、「プログラミング」されて動いているものを探すあそびです。
信号機、自動販売機、駅の券売機、踏切……ありとあらゆるものがプログラミングされて動いていることに気付くことができるでしょう。最初は、どれだけ見つけられたかの数を競うところから始めてみるのもおすすめです。
ひととおり発見したら、次は、それぞれがどんな仕組みで動いているのかを考えてみるとよいでしょう。時には立ち止まって観察し、「信号は青が10秒たつとピカピカして赤になる」といった一定の法則を発見してみてください。いつもの街の風景が、ちょっと違って見えてくるかもしれません。
絵本でプログラミングを知ろう
小さい子どもでもわかりやすく、コンピュータの仕組みやプログラミングのことを知ることができる本が現在はたくさん出ていますので、「コンピュータは苦手」という保護者の方は、ぜひお子さんと一緒にプログラミング絵本を楽しんでみることをおすすめします。
私は、地域の子どもたちにプログラミングの楽しさをお伝えする「親子プログラミング体験教室」を開催しています。その際、幼児から小学校低学年ぐらいまでの子どもたちには、プログラミングに関する絵本の読み聞かせなども行っいますが、みんな興味深くお話を聞いてくれます。
小学校によっては、学校の図書館に「プログラミング本」のコーナーを設けており、多くの子どもたちが楽しんで読んでいます。ここでは、特におすすめの2冊をご紹介します。
監修/松田孝 フレーベル館 2800円(税別)
アルゴリズムとは「目的を考えるための方法」のことで、買い物や料理の順番・手順もアルゴリズムです。プログラミング的思考に欠かせないアルゴリズムについて、わかりやすいお話を例に紹介しています。コンピュータが苦手だと感じる大人の方にもおすすめです。
作/リンダ・リウカス 訳/鳥井雪 翔泳社 1800円(税別)
フィンランドの女性プログラマーが子どもたちのために描いた、プログラミングの基本的な考え方を知ることができる絵本です。前半は好奇心旺盛な女の子ルビィのお話が楽しめ、後半には親子で挑戦できる練習問題になっています。https://amzn.to/3ntecCk
まとめ
プログラミング的思考は、子どもたちが、学校や社会に出て生きていく中で、役に立つ思考です。もちろん大人の方も、様々な場面で活用することができます。
子どもたちも毎日の生活のなかでも無意識に行っているものですが、「他のやり方もあるかな」「もっと早くするにはどうしたらいいかな」と問いかけをしていくことで、柔軟な考え方が身に付いていくことが期待できます。
大切なのは、勉強のように押し付けるのではなく、「あそび」として楽しむことです。ぜひ、親子のあそびのひとつとして取り入れてみてください。