“求められる人材”になる育て方とは
今までの時代、いい会社に就職するためには、「学歴」が必要でした。「学歴」は、人の能力を保証する資格として機能するものでした。しかし、加速度的に変革が進む現在では、世界的に、「異能」の持ち主であれば、10代の若者でも、大学に入ることなくGAFA(グーグル・アップル・フェースブック・アマゾン)などの世界的な一流企業にスカウトされるようなことが起こっています。もはや「学歴」ではなく、「異能」が求められる時代に突入したということです。
様々な分野で研究が進み、瞬時に情報が行き渡るネット社会において、横並び的な閉塞感に風穴を開けるには、革新的な発明や独創的な発想が求められています。単純な作業や訓練すれば誰でもできる仕事はAIやロボットに移管されます。
そこで最近は、「学歴ではなく、異能の時代だからこそ地頭を鍛えよう」というようなことが謳われ始めました。「異能」というとあまりにも飛躍したイメージを与えてしまうかもしれませんが、要はテストに合格するための勉強ではなく、イノベーションを起こせる地頭力を鍛えて、時代を動かす能力を養成しようということです。
「異能」に通じる地頭力とは、「先天的な才能だから鍛えようがない」と思っている人も多いかもしれませんが、実は、後天的に伸ばすことができる能力だと我々は考えています。
確かに、「地頭の良さ=生まれつきの能力」というのが一般的なイメージですが、長年、幼児教育に取り組む中で、幼少期の体験や環境によって、地頭を後天的に鍛える事ができると考える様になりました。
2020年の東京オリンピックで金メダルを目指す一流のアスリートをみていても、幼少期から様々な試行錯誤を繰り返しています。常に物事を偏見や先入観で見ず、前提条件を疑いながら、ゼロベースで捉え、ひたすらぐるぐると考えながら、鍛え続けている。
世の中には、分野に関係なく「この人、天才!」と感心させられる様な人々がいますが、結局、スポーツでも勉強でも、常に目の前の物事に好奇心と疑問を持ち続け、様々な方法や視点で糸口を考え、鍛え、挑み続けることができる人が「天才」と呼ばれているのです。
後天的に「地頭」を鍛えることで「異能」への道が切り拓かれ、これからの時代に求められる人材になるのではないでしょうか?
課題発見の時代に求められる地頭の良さとは
日本はこれまで、工業製品の品質の高さとコストパフォーマンスの魅力で世界経済に貢献してきました。その分、社会に求められてきたのは、トップダウンの管理下で力を発揮でき、かつ学歴による能力の保証がある人材でした。よって教育も、テストの問題を素早く正確に解く力、つまり「課題解決の力」が重要視されてきました。
ところが変化の時代では、自分で社会のニーズを見つける「課題発見の力」が求められるようになりました。自ら問題を定義していく時代で発揮されるのは、テストの問題を解く能力ではなく、地頭の良さです。つまり、常にあらゆる角度から、物事を考え続ける力です。それは、教育の力で育てることができる能力であり、大人になってからも鍛えられます。
「今は、まったく新しい能力が必要とされる時代で、自分は時代遅れだ」ととらえてしまう人もいるかもしれませんが、テストの問題を解くような能力がもてはやされた時代は、日本の歴史において、せいぜい50年ほどのことでしかありません。
何も真新しい能力を求められているわけではありません。少なくともソニーの森田さんやパナソニックの松下さんをはじめとする昭和初期の起業家にはいずれも、今の時代に求められているような地頭の良さがありました。
教育も、テスト教育を受けてきた我々も、一旦ズバッとリセットして、能力を鍛え直せばいいのではないでしょうか。
(次章につづく)