教育分野にテクノロジーを取り入れる「EdTech(教育テクノロジー)」。
教育格差を減らし、子ども一人ひとりの成長に合った学びを提供できるという点で注目を浴び、世界中で教育現場へのICT導入が急速に進んでいます。
日本は、世界各国と比べるとまだまだ進みは遅いように感じられますが、経済産業省による「未来の教室」プロジェクトが始動するなど、国をあげてEdTechを推進しています。
今回は、そんな状況下で「幼児教育」に「テクノロジー」を取り入れた先進的な知育おもちゃ『HEMPS』を開発する企業、株式会社プレイシップさんにインタビュー取材をさせていただきました。
株式会社プレイシップとは
「知育」x「遊び」x「テクノロジー」で「親子のかけがえのない体験」を実現
株式会社プレイシップはEdTech領域でビジネス展開するスタートアップ企業です。子どもの遊びから得られる学びを「テクノロジーによってサポートする」幼児向け教具を手がけており、当サイトでも前回、プレイシップの製品であるAI積み木『HEMPS』のご紹介をさせていただきました。
今回の取材では、株式会社プレイシップ共同創業者である花岡 直毅さんにお話をお伺いしました。
AI積み木『HEMPS』について
―HEMPSはまさに、教育(Education)× テクノロジー(Technology)の知育おもちゃですが、あくまでも子どもは積み木あそびに専念し、専用アプリは親が使うようなシステムなんですね。
―このように「親子で一緒に遊ぶこと」を重視している理由はありますか?
花岡さん:そうですね。実はこのHEMPSという知育玩具は、プレイシップの最初の製品になります。
実は私自身、5歳、4歳、0歳の子どもがいるのですが、長男が産まれたときは大変忙しく、一緒に遊んであげる時間がありませんでした。私としては、一緒にいられる時間があるのなら、「一緒に遊びたい。子どもの成長に寄り添いたい。」というふうに思ったんです。
そういった中で、親の子どもへのかかわり方を増やしていくサービスをつくりたい、子どもの成長が感じられたり、子どもの成長を引き出せるような製品・サービスをつくっていきたい、という思いを抱くようになり、プレイシップを立ち上げることになりました。
ですので、プライシップのミッションステートメントに、「ペアレンツエンゲージメント(※)」を掲げています。(※子どもの成長に親がもっと深く関わっていこうとする考え方のこと)
―親子で遊ぶことで、我が子の成長に気がついてあげられる。成長に気がついてあげることで、さらに子どもの能力を引き出す手助けができる。HEMPSはまさにそれを実現させた製品ですね。
―「子どもの遊びはリアルにこだわる」という言葉もHPで拝見しましたが、ここにもこだわりがありますか?
花岡さん:リアルな遊びにこだわるというのは、親子時間をデバイスを渡して終わりにするのではなくて、親子が楽しいなと思えるような、昔ながらの遊びを一緒にしてほしいという意味です。そういう親子の時間を、テクノロジーを使ってサポートするようなプロダクトを作りたかったんですね。
―「数学的要素」を取り入れた知育おもちゃを開発した理由を教えていただけますか?
私はプレイシップの他にコンサルティングの仕事をしています。ビジネスの世界では、ある問題に対し論理的に物事を整理し、課題を洗いだす。そして「打つべき手を打つ」。これが基本です。つまり、将来世の中で活躍するためには論理的思考力や計算力、判断力が必須なんですね。これらの能力は、突き詰めると「数学・算数力」なんですね。そういった意味で、数学的センスに焦点を当てたサービスを開発しています。
―数学的思考力は【幼少期】のうちから身に付けることが重要なのでしょうか。
日本では、小学校1年生で既に算数についていけなくなってしまう子がいるようです。未就学児の間に伸ばすべき能力を伸ばさないと、小学校入学時にはだいぶ差が出てしまうことが分かっているんですね。ですから、未就学児の時から数学センスを身に付けておくことは非常に重要だと思います。
小学校入学以降は、学習指導要綱によってどういった能力を身につけるべきかを学年に応じてカリキュラム化されています。一方で、未就学児に対しては現在の日本においては決まったカリキュラムはありません。プレイシップでは小学校1年生の学習にスムーズに入れるように身につけておくべき算数の能力をアカデミックなアプローチで体系化することに挑戦しています。
―HEMPSは子どもが組み立てた積み木を分析し、子どもの数学的成長度合いだけでなく、「できることの可能性」も教えてくれるんですよね。
そうですね。例としてあげますと「洗濯物を畳める」という結果が出ることがあります。これは、「対称」という形を理解しているという意味で、図形の認識力が身に付いているということですね。
そいった子どもができるようになっている数学的なアビリティを、日常生活のこととして言い換えて教えてくれる仕組みになっているんですね。
他には「目的地まで迷子にならずに辿り着ける」という結果が出れば、それは「空間認識力が高まっていること」を表していますし、「料理のお手伝いでしょうゆとか日本酒の量が量れる」でしたら、Measurementつまり計測が理解できているよ、という意味になります。
―積み木の形からそんなことまで分析できるんですね。どんな仕組みなのでしょうか。
花岡さん:HEMPSの積み木を今ちょっと出してみました。
このように補助棒を使いながら積んでいただき、それを専用アプリで写真を撮ります。アプリは積み木一つひとつの中心を読み取ることで、積み木がどのように積まれているかを認識するんですね。中心をドットで認識して、形・段の数・対称性等を分析してスコアリングします。
そのスコアリングによって、このスコアリングゾーンにいる人たちは、例えば、「洗濯物を畳めるようになっているかもしれない」というようなアドバイスを出すという流れです。今もそのデータを集めている最中です。
―今後もデータを集めながら進化し、精度もどんどん上がっていくということですね。
花岡さん:そうですね。でも、100%の精度でやろうとしているわけではないんです。
HEMPSが提案してくれたことを親が見て「あれ?うちの子こんなこともできるようになってるの?」、というような気づきを持っていただき、結果的に「じゃあ今度一緒に〇〇してみよう」という風に、子どもとの時間を増やしてもらいたいというのが一番の狙いなんです。
―「知育という曖昧な言葉で片付けない」という言葉がHPにございまいしたが、「曖昧な知育おもちゃ」と「明確な知育おもちゃ」について詳しくお話をお聞かせいただければと思います。
花岡さん:例えば、「これは頭がよくなります」とか「手先を動かすことで脳が刺激されます」とか、おもちゃ屋さんに行くと色々とそういった知育おもちゃを見かけますよね。
でも実際に「知能的発達を促進する」ことをきちんと証明できる知育おもちゃは、ほとんど無いと思うんです。なのでもう少し科学的に、どういうスキルをどういうやり方で伸ばしていくのか・・・そういうところをハッキリさせたかったんです。
また、少し話は変わりますが、日本の幼児教育は、情操教育が中心ですよね。幼稚園でも、感性の部分を重要視する傾向があります。
しかし一方で、アメリカとかヨーロッパとか最近だとシンガポールとかロシア式算数などと言われていますけれど、数学的な考え方をしっかりと体系化しているんですよね。
例えばスタンフォード大学の幼少期の数学教育を研究している「DREME」というプロジェクトがあるんです。最近ですと、データ・アンド・オペレーションズといって、デジタル時代に最適な「データとはどういうものなのか」とか、「データの性質ってどういうものなのか」とか、そういった内容を幼児と会話しながら、正しい概念や感覚を理解させる取り組みをしています。
世界的には物事を「概念として理解・定着させる」ような教育が主流になってきているという感覚があります。ですので、そういったところに着目して今後も製品・サービスづくりを行なっていきたいと考えています。
―花岡さん、本日は非常に興味深いお話をどうもありがとうございました。今後の『株式会社プレイシップ』と花岡さんのご活躍に期待しております。
現在『HEMPS』は下記公式オンラインショップからご購入いただける他、六本木蔦屋書店、柏の葉 T-SITEでもお求めいただけます。