2020年より、公立小学校の5, 6年生で英語が正式な教科となりました。
どうなるのだろう、どうしたらいいのだろう、出遅れて将来英語嫌いになったらどうしよう……と、不安でいっぱいの保護者のために、ここでは英語必修化の具体的な内容と、それに向けてどのような準備が必要かをご紹介します。
英語必修化 何がどう変わる?
2017年3月31日に告知された新しい学習指導要領では、小学校3, 4年生が行う外国語(英語)活動、5, 6年生からは教科としての「英語」が始まります。
英語活動はすでに5, 6年生を対象に行われているもので、アルファベットを使わないで(文字を書いたり読んだりはしないで)、英語の「聞く力」「話す力」の素地を作るために、英語の歌ったり、手遊びやダンスをしたり、ゲームをしたりしながら英語に親しむことを目的としたものです。
それが2020年より3, 4年生に下りてきて、年間35時間、週に1コマ程度行われます。
5, 6年生で行う教科としての「英語」は、英語活動の倍、年間70時間、週に2コマ程度行われるものです。教科なので、教科書があり、成績もつけられます。
内容は、英語活動で行われる「聞くこと」「話すこと」に加えて「読むこと」「書くこと」が入ってきます。
この英語活動と教科としての英語を合わせて、600~700語の英単語、look atやget upなどの熟語を学ぶことになっています。そのほかにも会話表現を通して、疑問文や動名詞、過去形なども入ってくることになっています。
授業はどうなる?
ここまで読んで、多くの保護者は「これは大変!」と思うかもしれません。ただ、保護者の方が学生時代に勉強してきたような、最初にアルファベットを覚えて、次に基本文型を覚えて、単語を覚えて…という勉強方法とは大きく異なっています。
最初にデジタル教材を視聴 → 聞いたことを真似したり、繰り返したりする → その表現をもとにクラスメイトとコミュニケーションをする
という流れで行います。たとえば
A : What sport do you like?
(どんなスポーツが好きですか?)
B : I like soccer.
(サッカーが好きです)
A : You like soccer? That’s nice. Why?
(サッカーが好きなんですか? それはいいですね。どうしてですか?)
B : It’s fun. How about you? What sport do you like?
(おもしろいからです。あなたはどんなスポーツが好きですか?)
このような対話を学びます。
この文章を保護者の方が習った時代は、最初に一般動詞の平叙文を習い、疑問文を習い、その後に「疑問詞whatを使った疑問文」という課程で習っていったと思います。
けれども小学校で行われる英語の授業は、”What sport do you like?”という文章が、どのような文法的な構造を持っているかということは扱いません。
真似をしながら、こういう時にはこういう風に話すんだよ、ということをつかんでいくのです。
詳しいことは中学、高校で学ぶことにして、小学校ではその前に英語の文字や音に慣れよう、というのが、これから始まる小学校英語の内容です。
英会話教室や英語塾が必要? 楽しい!という気持ちが大切
現状では、小学校教員の中で、中学校英語教員の資格を持っている人は、ほとんどいません。
ほとんどは英語教育を専門的に学んだことがない先生と、ネイティブ・スピーカーのALT(アシスタント・ランゲージ・ティーチャー)が教えるということになりそうです。文科省も小学校教員に対しての研修を実施していますが、学校でどのような授業になるかは、ふたを開けてみなければわからない、というのが正直なところです。
となると、英会話教室や英語塾に通わせた方が良いのでしょうか?
行かせるべきだとお考えの保護者にとっては、がっかりするような統計もあるのです。幼児期や小学生時代に英会話教室に通ったことのある中学1年生と、習ったことのない1年生の両方を対象に、中1の終わりに英語学力調査が行われました。その結果は、リスニングテストでもリーディングテストでも、差はありませんでした。
その後の追跡調査でも、中学以前の英語学習経験の有無にかかわらず、自宅での学習習慣がある生徒は成績が伸び、学習習慣のない生徒は成績が下がる、という、言ってみれば当たり前の結果が出ました。
ここから言えることは、もし子供が英語が大好きで、興味を示しているのなら、英会話教室や英語塾に通わせることも良いことかもしれません。しかし、それが学校の成績や、ひいては今後の勉強にはさほどプラスにはならない、ということは、認識しておくべきでしょう。
学校の英語にお子さんが興味を示さなかったり、面倒くさがるようなときは、遊びながら楽しく英語に触れる経験を用意します。保護者は子供が学校でやっている英語に興味を持ち、話を聞いたり、一緒にゲームをやってみたり、一緒に勉強することの方が、英語好きな子供を育てる上では大きな効果があります。
新しい言葉を習うことは、楽しいことであり、自分の世界が広がるのを実感する経験でもあります。子供たちは放っておいても英語を楽しんで取り組むことでしょう。周りの大人にできることは、その楽しさを邪魔しないこと、好奇心の芽を摘まないことではないでしょうか。
まとめ
2020年より、小学校の3, 4年生で英語活動が週に1コマ、5, 6年生で教科としての英語が週に2コマ始まりました。
あくまでも中学・高校で本格的に始まる英語学習の素地づくりの期間なので、保護者が不安に思う必要はありません。
小学生の段階で、勉強を強制して逆に英語嫌いになることのないように、子供が学校の英語の授業を楽しみ、英語好きになれるような声かけや協力を考えてみてください。