こんばんは、おしぃです。
真夜中に窓から外を眺めていた。
薄紫の空に小さな星々がかすかに光っている。
小学生の時に理科の授業でもらった「星座板」
少し厚手の紙で出来ていて時間と方角を合わせると
空に出ている星の名前がわかるものなのだが
毎晩、夜を待っては父親と「星座板」を片手に
近くの公園で一緒に星を見ていたのを思い出した。
小学生時代の僕にとって
公園で星を見るという事は特別な意味を持っていた。
通常であれば寝ているべき時間に
理科の勉強と称して堂々と外に出ることができるのだ。
住み慣れた近所の風景も
「夜」という、ただそのひとつの違いにも関わらず
僕にとっては、まるで別世界の様に見えていた。
肺に吸い込む少し冷たい空気
昼間に感じる事のない香り
人通りの少ない通学路
そして誰もいない公園
僕は学校で先生から教えてもらったばかりの内容を
まるで自分で調べた知識であるが如く
「星座板」と夜空を交互に指差しながら
横に座る父親に説明をした。
今思えば、僕の説明の意味が父親には
伝わっていたのだろうか。
父親は空を見つめたままで
「そうか、そうか」と答えていた。
父が他界した時、
一番に思い出した父親の表情はその時の横顔だった。
父親の遺品整理で実家の倉庫を隅々見たが
あの時の「星座板」はとうとう見つからなかった。
当時でもあれだけ毎日使っていた物だ
おそらくボロボロになって母親が捨てたのだろう。
この歳になって、今、改めて空を眺めてみても
当時あれだけ記憶していたはずだった
星座の数々の半分も思い出せなくなっていた。
僕は、煙草をくわえて
パジャマ姿のままで近くの公園へ行った。
もう「星座板」は持っていないが、
代わりに「スカイマップ」というアプリを開いた。
GPSで空の星々の名前がわかるのだ。
何気なく眺めているうちに、
段々と忘れていた星座の名前を思い出してきた。
そして、ひとつ思い出すごとに
「そうか、そうか」という父親の声が
僕には聞こえていた。
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