子育ての中で、子どもの想像力や発想力に驚いた経験はありませんか?
「うちの子、すごいかも?」
「この発想力、もっと伸ばしてあげたい…」
そんなことを思われた方は、日常生活の中に「デザイン思考」を取り入れてはいかがでしょうか?
本記事では「デザイン思考」とは何かや、子どもが学ぶメリット、今日からでも家庭で取り入れられるデザイン思考のヒントを紹介します。
1.デザイン思考とは?
「デザイン思考」とは、問題を解決するためのアプローチのひとつです。
同様の問題解決のアプローチを代表するものとして「論理的思考(ロジカルシンキング)」があります。
論理的思考は、問いに対して客観的なデータをもとに、論理を組み立てながら結論を導き出す思考法です。結論に至るまでの筋道が明確であることや、誰が行っても必ずその結果にたどりつける再現性が求められます。
一方、デザイン思考では、あらかじめ「問い」が設定されているわけではありません。
「デザイン思考」は「人間中心」の考え方でもあります。
誰かの「〇〇を何とかしたい」「××で困っている人がいる」という状況を「どうやって解決するか」を考えるのが、デザイン思考の基本です。
現状を観察し、インタビューなどを通じて深掘りしながら、自分たち自身で課題を設定します。その課題に対して「こうしたらいいのでは?」という仮説を立て、実験で検証し、修正を繰り返しながら、自分たちなりの解決策を導き出します。デザイン思考では論理的思考で求められた論理的整合性や再現性よりも、主観や直感が重視されます。
デザイン思考が登場したのは1990年代で、建築やプロダクトデザインなどの分野で注目されてきました。近年では、答えの出せない問題に対して「こうしてはどうか?」というアプローチを行う思考方法として、「ものづくり」以外の分野、なかでも未来を担う子どもたちの教育の観点からも注目されています。
2.デザイン思考のアプローチ
デザイン思考のアプローチ方法を実際に見ていきましょう。デザイン思考は以下の5つのプロセスで進みます。
それぞれのステップを見ていきましょう。
1.共感する
デザイン思考を通じて解決したい「困っている人」や「困りごと」について、理解するプロセスです。詳しく理解するために、観察したり、話を聞いたりします。
2.定義する
解決すべき課題を特定するプロセスです。「〇〇で困っているんだったら、~すればいいのでは?」「~するにはどうしたらいいんだろう?」など、話し合いながら「〇〇を~するには?」の問いの形にまとめます。
3.アイデアを出す
思い付いた解決策を、できるだけたくさん出し合います。ホワイトボードやポストイットを使って、アイデアを可視化します。
4.プロトタイプ(試作品)を作る
アイデアを形にするプロセスです。模型やストーリーボードなどを活用します。
5.テストする
プロトタイプを使ってテストします。
デザイン思考を学び始めた段階では、もっともシンプルな3ステップのプロセスを活用します。
- アイデアを出す
- アイデアを形にする
- 振り返る
この3つのステップを活用しながら、ものづくりなどを通して自己表現を学びます。
3.デザイン思考を学ぶメリット
子どもがデザイン思考を学ぶことを通じて期待できるメリットとして、以下の3点があります。
- 創造性を養うことができる
- 自信を持てるようになる
- 自分のアイデアを言葉にできるようになる
メリット1.創造性を養うことができる
学年が進むにつれて、「問題に回答する」能力が求められる割合が増していきます。
しかし、変化が速く、予期しないことが起こる現実社会で生きていく上で、現在の状況の中から課題を見つけ出し、正解のないなかから解決策を見つけていかなくてはなりません。
デザイン思考の基礎を身につけることを通して、幼いうちから自分で考え、手を動かしながら試行錯誤する力を養うことができます。
メリット2.自信を持てるようになる
日本の青少年の自尊感情の低さが問題になっています。
以下のグラフは13歳から29歳の青少年を対象とした意識調査です。
平成30年「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」より
「自分自身に満足している」「自分には長所があると感じている」と答えた青少年の割合は、ともに10%台で、諸外国と比較しても低い割合です。
平成30年「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」より
日本の青少年の自尊感情の低さには様々な要因があるでしょう。しかし小さいころから自発的に取り組み、「自分にはできる」「自分には何かを生み出す力がある」と感じられる機会があれば、成長してからの自信につながるのではないでしょうか。
デザイン思考には「ただ一つの正解」も「間違い」もありません。失敗するのは当たり前、失敗を積み重ねながらうまくいく方法を探ります。チームで取り組み、アイデアを出し合い、観察しながら誰も見つけていない方法を発見することは、子どもの大きな自信につながります。
メリット3.自分のアイデアを言葉にできるようになる
デザイン思考の大きな特徴として、「チームで取り組む」ことがあります。そのために、観察して自分が発見したことを言葉にしたり、「なぜ〇〇なんだろう」という問いを作ることで、言語感覚が養われます。
4.家庭で始めるデザイン思考
子どもにとって高いメリットのあるデザイン思考ですが、このプロセスは、繰り返し行うことを通して身につくものです。
デザイン思考をカリキュラムに組み込もうという動きは世界中でありますが、現段階で学校で継続的にデザイン思考のプログラムを用意している学校は限られています。
そのためデザイン思考に興味がある方は、まずは家庭で始めることをおすすめします。最初は保護者も一緒にデザイン思考を経験してください。
《家庭で始めるデザイン思考の例》
- 粘土で最強の動物を作る
- レゴで夢の乗り物を作る
- 段ボールでおじいちゃんの部屋を作る
子どもの年齢に合わせて、無理のないテーマを選ぶことが大切です。
《デザイン思考のプロセス》
- 観察する(動物園に行く、図鑑で見る、インテリアの本を見る)
- アイデアを出し合う。「ほかの動物とどこが違うの?」「なぜそうなっているの?」「どうすればできるかな?」など問いかけながらアイデアを深めていく。
- アイデアを形にする
- 家族でプレゼンを行う
5.デザイン思考を学べる場所
家庭では定期的に機会が持てないという場合は、デザイン思考を取り入れたデザイン教室へ行くのも効果的でしょう。デザイン思考を学ぶことのできるスクールを紹介します。
産官学提携で2002年に設立されたNPO法人CANVASでは、オンライン/オフラインのワークショップやイベントを通じて「創造的な学びの場」を提供し続けています。未就学児から大人まで、さまざまな取り組みが用意されています。
子どもデザイン教室は大阪市にある施設です。幼稚園年長から大学生まで自己表現のレッスンが3種類用意されています。自分の人生を自分でデザインできる人の育成を目指す教室です。
- 創ってコース…話すのが苦手な子どものための「創って伝えるコース」
- +話してコース…自分が創った造形物について「創って話して伝えるコース」
- ++書いてコース…自分の造形物について「創って話し、書いて伝えるコース」
株式会社みらいスクールが提供するサービスがGifte!です。自然と触れ合うイベントや、マインクラフトの体験会、また職業体験やアーティストと絵を描く体験など、さまざまな企画が提供されています。
まとめ:どんな時代にも求められる「人間中心」という考え方
世界は急速に移り変わっています。今ある職業のいくつかは、AIに置き換えられていくことが予測されています。子どもたちを取り巻く未来は、保護者にとっても見通しにくいものです。
しかし、どんな時代になっても「人間中心」を基本に据えた仕事は必ず求められます。共感の心を持ち、人の困りごとに気づき、解決策を見つけ、問題解決できる力があれば、どのような状況でも生き抜くことができるでしょう。
自信をはぐくみ、創造性の育成に効果のあるデザイン思考を、子どもたちと一緒に体験してみてはいかがでしょうか?