海外在住の家族にとって、子供の日本語教育は大きな課題のひとつではないでしょうか?
現地校に通う子供を完全なバイリンガルに育てるのは、思っている以上に大変です。
我が家の小学生の娘も、ロンドンで毎週土曜日に補習校へ通っていますが、補習校に行けば日本語ができるようになるというわけではなく、家庭での学習サポートの重要性をひしひしと感じています。
また、お住まいの地域によっては、そもそも補習校や学習塾といった選択肢がない場合もありますよね。
そこでこの記事では、子供の日本語教育にお悩みの海外在住の保護者の方に向けて、海外の日本語教育事情や、家庭学習に活用できるオンラインスクール、アプリなどについてお伝えしていきます。
海外で子供に日本語教育をする目的
海外で子供の日本語教育方法を決める際、まずは、「なんために日本語を学ばせたいのか?」を考えてみましょう。なぜなら、日本語教育の目的によって、目標とするレベルや、取り入れる学習方法が変わってくるからです。
たとえば、将来的には日本に帰国する予定の駐在家庭なら、日本の子供と同等の「国語力」。
一方、海外永住家庭の場合は、国語ではなく、「継承語」として日本語を学ばせたいという家庭も多いのではないでしょうか?
国語教育 | 継承語としての日本語教育 |
文科省の学習指導要領に準じた国語教育。
日本の学校に通う子供たちと同レベルの日本語力や知識を身につけ、帰国後の学校生活に順応できることが目的。 |
継承後=親から受け継いだ言葉。
学習の目的は、家族とのコミュニケーション、アイデンティティーの形成など、各家庭により異なる。 |
はじめに日本語教育の目的をある程度定めておくことで、教育方法選びや現地校とのバランスなど、のちのちの選択が比較的に楽になります。
海外の現地校に通う子供の日本語教育方法
海外で現地校に通いながら、子供の日本語教育をする主な方法には、つぎの5つがあります。
- 補習校
- 帰国子女向け進学塾・家庭教師
- オンラインスクール
- 通信教育の海外受講
- アプリ・タブレット学習
では、それぞれの特徴を見ていきましょう。
補習校
海外で子供の日本語教育をする方法の1つめは、補習校に通うことです。
補習校では、平日に現地校に通う子供達が、毎週土曜日、日本の国語の教科書にそって授業を受けます。本来なら1週間かけて習う内容を週1回で学習するので、毎日の音読や宿題など、家庭でのサポートが必要不可欠です。
補習校に通わせるかどうか、迷っているご家庭も多いかと思いますので、簡単にメリット・デメリットをまとめておきますね。
メリット
- (日本の学校に通う予定がある場合)日本の学校に順応しやすい
- 運動会やかるた大会など、日本の学校の文化体験ができる
- 同級生とアイデンティティーについての悩みをシェアできる
- 他の日本人家庭との交流ができる
デメリット
- 継承語としての日本語学習とは目的が異なる
- 補習校の宿題が負担
- 土曜日に他の習い事や家族の時間がなくなる
- 通学に時間がかかる
参考までに、補習校に通う子供の保護者に、家庭での日本語学習について聞いてみたところ、通信教育やアプリ学習を併用しているという回答が多く返ってきました。
帰国子女向け進学塾・家庭教師
海外で子供の日本語教育をする方法の2つめは、現地にある日本人向けの進学塾や家庭教師を利用することです。
帰国子女向けの進学塾は、一般的に、駐在員家族が多く住むエリアにあります。
補習校は国語のみですが、進学塾の場合は、帰国後の受験準備のため、他の教科にも対応していることが多いです。
また、通学圏内に学校がない場合や、ある程度スケジュールの柔軟性がほしいという場合は、個人で日本語の家庭教師を探すという選択肢もあります。
オンラインスクール
海外で子供の日本語教育をする方法の3つめは、オンラインスクールです。
コロナ禍の影響もあり、個人レッスンや少人数グループレッスンをオンラインで提供する通称「オンライン補習校」が注目されています。
その中でも、海外在住家庭の間でよく名前が挙がるのは下記のスクールです。
自宅にいながら、いろいろな国に住む同級生たちと一緒に学べるオンラインスクールは、補習校の通学面のデメリットや、家庭教師のコスト面のデメリットの解決策といえますよね。
ただし、お住まいの国のタイムゾーンによっては、授業の開催時間と都合があわないことも。
また、国語の教科書を使った授業なのか、それともオリジナルテキストによる継承語教育なのかもスクールによって異なるので、事前に問い合わせて確認しておきましょう。
通信教育の海外受講
海外で子供の日本語教育をする方法の4つめは、日本の通信教育の海外受講です。
進研ゼミやZ会といった日本でも人気の通信教育の中には、海外でも受講できるものもあります。
最近では、タブレットを利用したコースも多く登場しているので、海外在住でも日本の小学生と同じように学習することが可能です。
アプリ・タブレット学習
海外で子供の日本語教育をする方法の5つめは、アプリ・タブレット学習の活用です。
動画で授業が受けられるものから、ゲーム感覚でひらがな・漢字の練習ができるものなど、選択肢が豊富。
さらに、無料〜リーズナブルな価格で取り入れられるものが多いので、コストを抑えながら気軽に日本語学習をしたい方や、他の学習方法と併用したい方におすすめです。
※動画授業アプリは、就学前・低学年を対象にしていないものもあるので注意してくださいね。
おすすめの子ども向け日本語教育アプリ・オンライン学習
つづいては、海外での子供の日本語教育に役立つ、おすすめのアプリやオンライン学習教材をご紹介します。
進研ゼミ 小学講座 チャレンジタッチ
進研ゼミ 小学講座のタブレット学習版です。
国語・算数・理科・社会・英語の5教科が、日本の学校の教科書や授業の進度にあわせて、1日約15分で学習。
ゲーム感覚で楽しく学べるのが特徴です。
我が家の子供が通う補習校でも、進研ゼミのチャレンジタッチがだんとつの人気でした。
※ただし、チャレンジタッチには専用のタブレットが必要で、進研ゼミではタブレットの海外発送に対応していません。
日本の住所に送ってもらった専用タブレットを自分で持ち込むか、日本のご家族に郵送してもらわなければならないので、スタートが少し面倒なのがデメリットです。
進研ゼミ 小学講座の公式サイト
Z会 小学生タブレットコース
進研ゼミと並んで、日本でも受講者が多いZ会のタブレットコースです。
国語・算数・思考・英語・知識・プログラミングの幅広い科目を網羅。
手持ちのタブレットで受講できるため、海外在住でもすぐにスタートできます。
余計なゲームなどを省いたシンプル設計や、学習のスタートから丸つけ、問題の解説まで子供が自分で学習できるような工夫がされているのが特徴です。
海外からの無料資料請求にも対応しています◎
Z会 小学生タブレットコースの公式サイト
スタディサプリ小学講座
「スタディサプリ小学講座」は、英語学習アプリで有名な、スタディサプリの小学生向けコース。
プロの講師による授業動画で、国語・算数・理科・社会を学習することができます。
テキストも、PDFで無料ダウンロード可能。
月あたり1,815円(税込)〜利用できる、アプリならではの手軽さが魅力です。
※対象学年は、小学4年生から6年生までの3学年となっています。
スタディサプリ小学講座の公式サイト
小学生手書き漢字ドリル1026
「小学生手書き漢字ドリル1026」は、小学校で習うすべての漢字が学習できる無料アプリ。
漢字は画面に直接手書き。学年ごとの漢字がゲーム感覚で学べます。
教育委員会のホームページでも取り上げられるほど、高評価を得ている人気アプリです。
e点ネット塾 小学生コース
「e点ネット塾」の小学生コースは、小学1年生以上を対象にした授業動画サービスです。
教科は国語と算数の2つで、授業動画を見たあとに、無料ダンロードした問題集で理解度を確認しながら進めていきます。
動画だけでは理解できなかった内容は、メールやFAXでサポートセンターに何度でも無料で質問できるのが特徴です。
e点ネット塾 小学生コースの公式サイト
インターネット家庭教師のNetty(ネッティー)
Netty(ネッティー)は、授業動画ではなく、リアルタイムで家庭教師の受けられるオンライン個別指導システムです。
対象は小学1年生からで、教科やレッスン回数は自由に選べます。
ただ、継承語としての日本語教育を専門とした講師ではないので、「国語」を学びたい子供向けです。
帰国後に備えて家庭教師を利用したいけど、なかなか現地で教師を見つけるのは大変、またはコストがかかるという悩みを抱えている方は、検討してみてはいかがでしょうか?
インターネット家庭教師のNettyの公式サイト
無料で活用できる子供の日本語教育ツール
海外で子供の日本語教育をする際に、もっとも大切なのは家庭でのサポートです。
そこで、家庭での日本語教育に活用できる、おすすめの無料教材をいくつかご紹介します。
YouTube
無料で活用できる日本語教育ツールの1つめは、YouTubeです。
日本のアニメや、海外のアニメの日本語吹き替え版、童謡など、日本語を聞く機会をたくさん作ってあげましょう。
日常的に子供に日本語で話しかけているという家庭でも、語彙はどうしても限られてしまいますよね。
たとえば、一見、学習効果のなさそうな人気子供YouTuberの動画なども、生きた語彙力を伸ばすための教材として活用できますよ。
日本の教科書
無料で活用できる日本語教育ツールの2つめは、日本の教科書です。
海外に住んでいても、日本の教科書が無料でもらえるってご存知でしたか?
文部科学省は大使館・領事館を通して、日本国籍を持つ義務教育の年齢の子供たちに、日本の教科書の無償配布を行っています。
申請の方法は在住国によって異なるので、各大使館・領事館のホームページ等で事前に確認しておきましょう。
ぷりんときっず
無料で活用できる日本語教育ツールの3つめは、ぷりんときっずです。
ぷりんときっずは、幼児・小学生の学習プリントがすべて無料でダウンロードできるウェブサイトで、主に、就学前〜低学年の子供におすすめです。
海外ではなかなか手に入りにくい国語学習ノートの印刷もできます。
ちびむすドリル
無料で活用できる日本語教育ツールの4つめは、ちびむすドリルです。
ちびむすドリルも、幼児・小学生の学習プリントが無料ダウンロードができるウェブサイトで、幼稚園〜小学6年生まで、学年別にプリントが選べます。
国語・算数以外にも、社会・理科・英語・音楽など、幅広い教科に対応しているのも特徴です。
こちらも国語学習ノート、作文用紙など各種用紙の印刷ができます。
最後に
今回は、海外での子供の日本語教育事情や家庭学習に役立つ情報などをご紹介しました。
はじめにもお伝えした通り、海外在住の子供の日本語教育で重要なのは家庭でのサポートと、「日本語を学ぶ目的」を明確にすることです。
現地校が始まると、現地の言葉がどんどん優勢になります。
学年が上がるにつれて漢字も難しくなり、子供が日本語への興味を失うことは珍しくありません。
そのときに、子供になぜ日本語を学ぶのかをきちんと説明できるかどうかが、日本語教育を継続するためのカギになります。
また、保護者が日本語教育で迷走しないためにも、目的・目標レベルを設定して、それにあわせた学習方法を選んでいきましょう。